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高校入学から三ヶ月ほど経過した日。
「しっかり寝ろって言ってるだろうが。まさか、また宿題が終わらなかったとか言い訳するんじゃないだろうな。」
文月は、そう言う俺から微妙に目線を反らしながら、
「・・・イヤ、ベツニ?」
俺はため息をつき、バーカ、とだけ言ってやる。
「ひどい・・・。」
「・・・。」
「いじめられた・・・。」
「・・・・・・。」
「あの優しかったレンくんが懐かしい・・・。」
「・・・ああもう!うるせえな!わかったよ俺が悪うございました!」
と、周りから見たらきっとバカ二人がふざけ合っているようにしか見えないであろう会話をしながら、俺たちはその日も登校していた。
いつもと同じ、他愛のない風景だった。
学校での授業が終わり、生徒が部活動に向かう時間。
「・・・文月。」
「・・・・・・。」
「・・・おい、文月。」
「・・・・・・。」
俺は、机に突っ伏している文月の頭に手刀を喰らわせた。
「痛っ!?」
「やっと起きたか。」
「・・・寝てた、私?」
「ばっちり。」
それを聞いた途端、文月は顔を真っ青にして、
「うわああ、た、ただでさえ授業わからないのにぃいい!」
「そんなことはどうでもいい。さっさと移動するぞ。」
だが、文月は止まらなかった。
「何言ってるのこのままじゃ留年しちゃうじゃないそんなことになったらお母さんに笑顔で無言で叩かれて丸一年はまともなもの食べられないようわぁあああああどうすればいいのぉおおおおおおお!?」
「・・・、とりあえず落ち着け。」
俺はもう呆気にとられてそれしか言えない。
しかし、勝手に話は進んでいた。
「レンくん今日部活休むって部長に言っておいて多分補習だって言えばなんとかなると思うから、あ、今日だけじゃ無理だから三日ぐらいは来ませんって付け足しておいてねそれじゃあ私は帰って勉強するから!また明日!」
と、それだけ言って文月は教室を出て行った。
正直、あそこまで取り乱すとは思わなかったが、
「・・・まあいいか。」
俺は久しぶりにゆっくりとフルートの練習しようと、足早に音楽室に向かった。
今度は、他の小学校から来たヤツらだった。
小学校から彼女持ちかよ、うらやましーねえ、とかなんとか。
『・・・文月、ついてくるなって言ってるだろ。』
『え~・・・、レンくんは冷たいなぁ・・・。』
『あのなあ、お前はいいかもしれないけど、俺が妙な噂を立てられるってしっかりと教えたよな?』
『・・・言われたっけ?』
『・・・お前、ホント頼むからさっさと気付いて・・・。』
『ねえねえ、妙な噂ってなに?』
『人の話を聞いてくれ・・・。』
とまあ、こんな感じだった。
さらに、部活も『レンくんは何部に入るの?』と執拗に俺に問い続け、結局一緒に吹奏楽部に入部した。
周囲の反応は、俺が「かなり意外だ」と言われ、文月が「似合う」だったことも捕捉する。
これはまだいい。認めよう。
俺も、自分に吹奏楽は似合わないと思っている。普通にしている時でさえ、文月に「レンくん、怒ってるの?」等と聞かれるほどだから。要するに、なんだか悪人面というか、不機嫌そうというか。
いや、でもそこまで酷い顔じゃないはずだ。確かに端整とまではいかないだろうが、捨てたものではないとこっそり思っていることだし。
・・・話を戻そう。嫌だったのは、近所のおばさん達がニヤニヤしながら「文月ちゃんと離れるのがいやだったのかい」と言ってきたことだ。一週間ほど立ち直れなかったことを覚えている。
それにめげず、正式に入部した後は、
『はい、じゃあこの中のどれかを選んで。』
『・・・俺はフルートで。』
『あ、じゃあ私も・・・。』
という感じで楽器が決まり、その後も、
『レンくん、これってどうするの?』
『う~・・・、上手く音出ないよ~・・・。』
『ねえねえ、ここの吹き方教えて!』
こんな感じで毎日のように問いつめられた。
文月と一緒にいることで、俺は一日の体力の半分以上を文月のサポートに使っていた。
しかし、それが当たり前のことではないとわかったのは、文月が入院し始めてからだ。
文月があまりに近いところにいたから、それは至極当然のことで、ずっと続くと思っていたのだ。
思い出
俺の名前は黒島 廉榎。レンカと読む。現在一六歳。
なぜ親が俺にこんな変な名前をつけたのか、未だに分からない。もしも珍しい名前をつけたかっただけとか言われたら、多分二、三日は立ち直れないだろう。
そうなるぐらい、名前でからかわれたことがある。
起床。そして、目覚まし時計で時刻を確認。
「あー・・・。もう十時か・・・。」
こんな時間に起きていることから分かる通り、今日は休日である。カレンダーを見ると、部活も無いようだ。
そうなると、俺は決まってある場所へと向かう。
家から歩いて三十分ほどのところにある、国内でもそれなりに大きい病院だ。
そこの二〇四号室。一人用の部屋。
書いてある名前は、近藤 文月。
俺の幼馴染みの女子で、一年ほどここに入院している。
いわゆる、植物状態らしい。
俺と文月が知り合ったのは、俺たちが四歳のころだった。
その頃の文月―いや、今の文月も少し―は人見知りで、俺が声をかけてもすぐに逃げていく様なやつだった。
対する俺は、かなりのやんちゃ坊主で、いろんなところを走り回り、ものを壊し、親に怒られていた。
簡単に言えば、正反対の性格だったのだ。
しかし、小学校に入る頃辺りからは、普通に遊べるようになっていた。というか、文月が俺の後ろをちょこまかとついて回るようになっていた。
ただ、問題が二つあった。文月が結構可愛かったこと、もう一つは、本人には可愛いという自覚がなかった―今もあるとは言い難い―ことである。そのせいで、小学校のころの俺は毎日のようにからかわれまくった。内容は、まあ昔の青春ドラマとかにありそうなアレだ。小学生はそういうことをするのが好きなもんだ。
俺は、それが嫌で文月に付いてくるのを止めるように言った。ヤツはずっと付いてきた。
結局、同級生から色々言われ続け、よくそういうヤツらとケンカしていた。
まあ、小学六年にもなると段々止んできて、俺も落ち着いてきたのだが。
私を知っている方々に。
幽霊と入学式
俺は、幽霊を信じるか、と聞かれたら答えられない。
なぜなら、見てしまったからだ。幽霊のようなもの、いや、もしかすると本物の幽霊を。
高校の入学式。
校門、昇降口を抜けて、自分の新しい教室へ向かっていく。
ふと、窓からグランドを眺めてみた。
俺が通っていた中学校と違い、それなりに広い。右の方には野球のフェンス、左の方には体育館があった。体育館の屋根の色は、一面赤。しかし、
「・・・人?」
そこに、俺たちの学校の女子生徒が座っていた。顔は分からないが、制服の色や形は間違いなく女子の制服だ。
おかしい。そう思って見ていると、
「おーっす、元気かぁ?」
俺の小学校の頃からの友人が、声をかけてきた。
俺は、ちょうどよかった、と体育館の屋根の上の女子生徒を指さし、
「・・・なあ、あれ、誰だ?」
「・・・はあ、どれ?」
「え、だから、体育館の屋根の上にいるだろ?」
「誰が?」
「は・・・?」
もう一度、体育館の屋根の上を見てみる。
確かに、そこには人がいた。
座っている女子生徒。
だが、友人には見えていない。なぜ?
しかし、俺はそれ以上考えることが出来なくなった。
俺が見ている前で、女子生徒がふっと消えたのだ。まるで、煙のように。
入学式のことは、全く覚えていない。あの不思議な生徒のことが頭から離れなかった。だから、入学式が始まり、終わったことすら分からなかった。
下校する前に、もう一度体育館の屋根の上を見ても、その女子生徒はいないままだった。
その後も、あの女子生徒は見つからず、俺は、少しずつあの日のことを忘れていった。
二年生の春。新しい一年生を迎える日。
友人と下らない話をしながら廊下を歩く。
一年生の時よりも一階高い二年生の教室。
グランドが随分と低いところにあるように見える。体育館の屋根も、俺の目線と同じぐらいか、ちょっと高いぐらいだ。何となく新鮮で、じっと見てみる。
そして、見つけてしまった。
俺の入学式の日と同じ、体育館の赤い屋根の上にただ座る女子生徒。
「嘘だろ・・・?」
「ん、どうした?」
友人がそう話しかけてくる声すら耳に入らない。俺は、ただ呆然と座っている女子生徒を見ていた。
だが、今回はここで終わりではなかった。
女子生徒が、こっちを見た。
そして、俺が見ていたことに気が付いたらしく、こっちに向かって飛んできた。
「え・・・!?」
女子生徒は、心底驚いた顔で浮いている。しかも、しゃべった。
『あなた、私のこと見えるの・・・?』
何も言えなかった。驚愕で声が出せない。
しかし、そいつは笑顔になった。
『私が見える人、あなたが三人目だよ。・・・あ、別に幽霊だからって呪ったりはしないから安心して?ただ、声をかけてみたかっただけ。』
そして、少し名残惜しそうに、じゃあね、と言って消えた。
それ以来、また幽霊は姿を見せなくなった。
俺は、幽霊を信じるか、と聞かれたら答えられない。
なぜなら、見てしまったからだ。幽霊のようなもの、いや、もしかすると本物の幽霊を。
もし、あいつが本当に幽霊なら、何であいつは幽霊になったのだろう?
そして、なぜ入学式の日にだけ、ああやって体育館の屋根の上に座っているのだろう?
そういえば、俺があいつを幽霊と呼ぶのだって、本人がそう名乗ったからだ。
結局、あの幽霊について何も知らないことに気付いた。
今日は、新しい一年生の入学式。俺は最高学年になる。
また、あの幽霊を見ることになるのだろう。そして、それがあいつを見る最後になるだろう。
来年の入学式からは、この高校の生徒じゃないから。
俺は、高校一年生の頃から使っているボロボロの靴を履いて、学校へと向かっていく。
これは、要するに僕の文芸活動作品ということです。
つまるところ、文字数が多くなったりします。
そうなると大変なのは、携帯版の方です。
重くて開けない・・・、なんてことになるやも・・・。もしくは見るのがメンドクサイとか・・・。
ですから、大山文庫はPCブログでお願いします。
僕の方でも「大山文庫(携帯閲覧はお控え下さい)」としておこうと思います。
明日辺りに初版が出ると思います。
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趣味は読書(最近はライトノベルに走り気味)ぐらいです。その内増やす予定。
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